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マーセデス・ラッキー「最後の魔法使者シリーズ」

魔法の使徒上 (最後の魔法使者第1部) (創元推理文庫)

魔法の使徒上 (最後の魔法使者第1部) (創元推理文庫)

魔法の使徒下 (最後の魔法使者第1部) (創元推理文庫)

魔法の使徒下 (最後の魔法使者第1部) (創元推理文庫)

魔法の代償 上 (最後の魔法使者3) (創元推理文庫)

魔法の代償 上 (最後の魔法使者3) (創元推理文庫)

魔法の代償 下 (最後の魔法使者3) (創元推理文庫)

魔法の代償 下 (最後の魔法使者3) (創元推理文庫)

何度目かの再読。
苦難に次ぐ苦難の連続の物語。
比類なき魔法使い、比類なき美しさを持つヴァニエルに、思い付く限りの苦難困難が待ち受け、劇的な解決があるわけでもなく、なのに続きが読みたくてどうしようもないシリーズ。
ヴァルデマール年代記が全部そんな感じで、それでもタルマ&ケスリー・ケロウィンが主役のシリーズは、因果応報や敵が倒され困難が払拭されるカタストロフもあるけれど、『使者』の存在を前面に押し出したタリア・エルスペス・ヴァニエルが主役のシリーズは本当にすごい。えぐい。何を食べてどう暮らしていたらこんなひどいことを思い付いてそれを書いて出版できてしまうのだろうと毎度思う。
劇的な演出をする前に用意された助走的な辛さ…というわけではなく、辛いものは辛いという辛さ。感情移入はしないので(『使者』という設定がいろいろなものを超越しすぎていて、精神のありかたが全員普通じゃないので、感情移入しようがない)自分自身が身を切られるような辛さはないんだけど、「もういいじゃん、もうその辺で許してあげてよ」と誰かに懇願したくなる。

ヴァニエルは使命があったから、辛くてもやっていけただろうけど、ステフの辛さを考えるともうたまらない気持ちになる。
最後の最後、零落れた老人扱いされるところもまた、容赦がなくてすごい。

これ先に読んでたから乗り切れたけど、ヴァンとステフのその後を知らないまま魔法使者シリーズを読んでいた人がいるとしたら、どういう気持ちで読んでいたんだろう。

世界観の作り込みとエピソードの見せ方がすさまじいんだろうなあ、と、毎度一気に読み終わって冷静に登場人物の身に起きたことを思い返しては感じ入る。
そこ! そこをもっと詳しく! というところが潔く省かれてて、アレッ!? てなったりするのもまたおもしろい…。